今日は、スタニスラフ・ブーニンベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」のコンサート。
母と母の友達と三人で久々のコンサートだから、やっとの思いで"早退"し、着替えと靴をデパートの化粧室に持ち込み、めかし込んだ。 

サントリーホールの前にはオーバカナルがあって、今日の公演の楽団の人がお茶をしていた。いい食事処が見付からず、トゥーランドットという中華料理レストランに入り、コンサートの人用の軽めのコースにしたら、思いのほか美味しいし、インテリアもなかなか素敵な店で、気に入った。


どうして、スタニスラフ・ブーニンベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」のコンサートに行くことになったかと言うと、母がベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」を、大好きなチャイコフスキーの「悲愴」だと勘違いして、チケットを抑えたのだ。親子共々実に間抜けである。

間抜けではあるが、チケットは最前列のど真ん中だ。余程人気がない演目だったからなのか、グランドピアノの裏側しか見えない席だからかは、よく分からなかった。


コンサートが始まる前に、アナウンスで「割愛」という単語だけが聞き取れた。何を割愛するのかさっぱり分からなかったが、なんと、ベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」を割愛してしまったのだ。
勘違いして取ったチケットとは言え、公演日の数日前から、母は、ベートーヴェンピアノソナタ「悲愴」を図書館で借りてきて、繰り返し聴いて、ようやく楽しみになってきたようだったのに、それなのにだ。


それだからというわけでもないのだが、あの世界的なピアニストブーニンは本当に魅力のない感じの人で、無表情でひょろひょろした風采だった。どっかの小学校の校長先生みたいな風貌で、歩き方も滑稽で、チャップリンみたいというか、両手を両脇にぴったり付けて歩くのがひどく情けない感じ。割愛したことに罪悪感を覚えているからなのか、観客を馬鹿にしているからなのか良く分からない。本人から、何のコメントもなし。


あんまりだから、会場の受付係りの人に理由を聞いたら、「体調不良」とのことだったが、会場入り口の貼り紙には、「出演者の強い希望により」と書いてあって「体調不良」とは書いてなかったから、「気が向かなかった」というのが多分ブーニンの本音だろうと思う。


「ブーイングすれば良かったね」と、私達親子意気投合。勿論、そんな人は一人もなく、皆温かい拍手。日本人は本当に心穏やか。


だから、ここで密かに、ブーニン ブーブーブーブー。ブーブーブーブー。